熊野古道・赤木越を歩いて

暑さがようやく和らいできた9月中旬、熊野古道・中辺路ルートの「近露~赤木越~湯の峰コース」を歩いてきました。

この時期の森は、朝になると霧に包まれ、やがて日差しに照らされながら晴れていく幻想的な光景に出会えます。午前7時、霧の中を出発。まだ体力も十分にあり、心も弾んでいる前半は、景色をじっくりと味わい、自然の音に耳を澄ませながら快調に歩を進めました。

場所ごとに響く音も変わります。セミの声が聞こえる場所では、厳しい夏の暑さを思い出してしまいましたが、鳥のさえずりには心が和み、沢のせせらぎには涼やかさを感じる。こうした音に包まれるのも、森歩きの大きな楽しみです。

道中では同じく熊野古道を歩く人たちとも出会い、軽く挨拶を交わします。疲れながらも森を楽しんでいる姿を見ると、こちらまで元気をもらえるものです。途中、とても涼しい風が通り抜ける場所があり、休んでいたハイカーが「まるで自然のエアコンだ!」と笑っていました。まさにその通り。空気が本当に美味しいのです。

今回初めて挑戦した赤木越ルート。三越峠を越え、猪鼻王子の手前に分岐があり、多くの人は熊野本宮大社へ向かうためそちらへ進みます。そのため赤木越を歩く人は少なく、とても静かな道のりでした。林道を抜けると尾根道が続き、天気に恵まれたこの日は、東西に連なる紀伊山地の山並みを一望。尾根歩きの心地よさと大パノラマに、思わず足を止めて見入ってしまうほどでした。

しかし後半は体力も尽き果て、景色を楽しむ余裕もなく、ただ3メートル先の地面だけを見つめて一歩一歩進む状態に。それでも足を運び続け、ついに湯の峰温泉へ到着!

湯の峰を指す道標。安政二年(1855年)。

汗でぐっしょりになった衣服を脱ぎ、真っ先に公衆浴場の温泉へ。湯に身を沈めた瞬間、全身を包み込む心地よさと達成感に、思わず深いため息がこぼれました。完歩の喜びと心地よい疲労感、そして湯の峰の温泉に癒される――まさに身も心も生き返るようなひとときでした。

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